リスキリングを導入する・予定企業は8割以上
これまで日本は世界に比べてリスキリングの普及が遅れていると言われてきましたが、国が推進するだけでなく、多数の企業でもリスキリングを勧める動きがでてきています。NHKの調査によるとリスキリングを導入している、もしくは導入予定の企業は8割を超しています。企業側がこれほど積極的にリスキリングを取り入れる、その効果や目的は一体何なのでしょうか。またリスキリングを実行し収入アップにつながった働き手の実例を見ていきましょう。
目的は「業務の生産性向上」がトップ
企業がリスキリングを取り入れる一番の目的は、「業務の生産性向上」があげられます。リスキリングで習得したスキルを活用し、人が手作業で行っていた作業を自動化または作業工程の大幅な削減をすることができます。業務の効率化が図られることで、空いた時間を顧客サービスに充てたり、新しい事業の開発に使うことができます。その結果、中長期的な生産性の向上や業績改善につなげることができるのです。
収入アップを図るリスキリングの習得
リスキングの結果として収入アップを求める人も多いのではないでしょうか。しかし本当にリスキリングをして新しいスキルを身につけることは、収入アップにつながるのでしょうか。ある調査によると「リスキリングが従業員の報酬に反映される」と答えた企業の割合は31%にもなっています。また実際にリスキリングをすることで収入がアップしたという事例もたくさん報告されています。
RPAのスキルを身に着けてDX化(山形)
山形県でITエンジニアとして働く女性は、リスキリングをすることで収入が入社時の1.7倍にもなりました。具体的にどのようにリスキリングを行い、どんな効果が現れたのでしょうか。
①課題:女性は顧客の代わりに国税庁のサイトから情報を取得する作業を、全て手入力で行っていました。1件5分であってもトータルするとかなりの時間を取られており、この時間をどう削減するかが課題でした。
②リスキリング:課題解決の為に、女性はリスキリングでPRA技術取得を目指します。PRAとはRobotic Process Automationの略で、単純な入力作業をコンピューターが自動で行えるようにするデジタル技術のことです。会社側が業務時間内にリスキリングを学ぶ時間・実践する時間を設けたことで、女性は学んだPRAの知識を実務で使えるレベルにまですることができました。
- 1か月目: eラーニングや研修の受講を1日5時間
- 2カ月間:プログラミングを実践 1日3時間
③効果:
- 女性が学んだPRAを使い、これまで手作業でしていた事務作業の自動化プログラムを作成したことで、会社全体として年間300日分を超える単純作業がなくなりました。
- 空いた時間を顧客との商談・サービスにあてることで経常利益は3年間で3割以上アップしました。また新しい事業も始め、この自動化のノウハウを伝える新会社を設立しました。
④女性の収入:入社当時は派遣社員として受付で働いていた女性。リスキリング後の現在は、新会社でシステムエンジニア兼リスキリングセミナーの講師として働き、収入は入社時の1.7倍になっています。
会社が業務時間中にリスキリングをする時間と実践の場を用意してくれたから、知識の習得だけにとどまらず実務に活かすことができたわ。
参考:https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4749/
NHK取材「各社の取り組み」
リスキリングを導入する目的として、業務の生産性向上以外にも「専門人材の育成」や「社員のモチベーション向上」を挙げる企業も多数あります。実際にリスキリングを導入している企業を見ていきましょう。
サントリーホールディングス
サントリーホールディングスは2015年に「サントリー大学」を設置しました。さらに2017年には学びのプラットフォーム「寺子屋」を始めます。ここでは社員が自ら学びたいことを発信することができます。さらに社員が講師を務めたり、社外から講師を呼んだ講習・イベント立ち上げも社員が進めていくのです。また社内放送で社員全体への「寺子屋」の認知度を高め、多くの社員が積極的に参加するよう働きかけています。
サントリーでは一人ひとりがキャリアオーナーとして、主体的に自分のキャリアを描き・行動することを目的としているんだって。
メルカリ
メルカリでは2022年に「mercari R4D PhD Support Program」をスタート。これは博士号を取得する目的で大学院進学を希望する社員に対し、R4Dが機密情報の研究利用手続きのフォローなど研究に必要な支援をするプログラムです。その他にも学費の全額支給や業務時間を週0~5日の間で選べるなど、リスキリングを希望する社員を全面的に支援するプログラムになっています。
金銭的にも時間的にも余裕が持てると、リスキリングにチャレンジしやすくなるよね。
日本製鉄
日本製鉄では2022年度からリスキリングをする人を対象に、最長3年間の休職を認めています。日本は世界と比べてリスキリングの普及が遅れていると言われてきました。しかし国内製造業の代表格である日本製鉄がリスキリングを推奨する制度を始めたことで、産業界全体としてリスキリングが加速する可能性があります。
リスキリングが当たり前になる時代も近いかも?!
参考:lhttps://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20230130a.html
【まとめ】NHKも注目のリスキリング政策
これまで世界から遅れをとっていたリスキングの普及率。しかし国が勧める支援策だけでなく、企業としてもリスキリングを推奨する動きが増え、NHKの調査では8割以上の企業がリスキングを導入または導入予定としています。また実際にリスキリングしたことで、企業側には生産性の向上や新事業の立ち上げ、働く側には収入アップやワークライフバランスが取れるなど、双方に良い結果をもたらした実例も多数でてきています。あなたも今働いている会社のリスキリング推奨する制度を一度調べてみてはいかがでしょうか。
その他にも残業時間が減ったり、ワークライフバランスが実現できて、働く人にとってもいい効果が期待されるんだね!