デジタル化が進む現代社会。
SNSでコミュニケーションや情報を収集。交通ICカードでバスに乗り、Web会議や資料作成のために、パソコンをフル活用。
また、セルフレジで買物をしたり、ECサイトでショッピングをしたり。さらに、自動運転の車が道路を走り、オンラインで診療も受けられます。
一見、日本はITで世界の先陣を切っているのではないかと思えるほど。しかし、本当にIT化やDXは進んでいるのでしょうか。
実は、国内でDXを進めている企業は、ほんのわずかなのです。
それはなぜでしょうか。
そこで、DXの定義から日本の現状やDXが進まない理由。そして、さまざまな工夫で、DXへ突き進んでいる企業などをご紹介します。
DXとは?リスキリングがなぜ必要?簡単に説明
日本はDXの推進が後れている状態です。それはなぜでしょうか。
理由は、DXのリスキリングが進んでいないからです。
まず、DX意味や進まない理由、そしてリスキリングの必要性をお伝えします。
DXの意味・定義
DX(Digital Transformation)は、デジタルトランスフォーメーションと読みます。これは、デジタルに変化するという意味。
企業がデータやデジタル技術を活用して、企業価値を高めたり、事業の収益を上げたりする方法を考え直すこと。さらに、競争するための優れた点を作り上げることです。
経済産業省が定義しているDXは?
経済産業省は、DXの「X」とは変革という意味のため、業務内容に変革がなければならない、としています。つまり、手書きで帳簿に記入していたものを、計算ソフトに変えただけではなく、そのデータを用いて改善点を見つけて、さまざまな管理の軌道修正をする。これこそが、デジタルトランスフォーメーションと定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
引用元:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0
政府が求めていること
DX元年である2018年以降、政府は企業のDXを推奨してきました。
それは、定義文でも示している通り、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立するためです。
そして、同じ年に「DXで今までのシステムの問題解決や、業務の見直しができない場合、2025年以降に甚大な経済損失が生じる」とも発表しました。
2025年の崖
多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変するデジタル・トランスフォーメーション(=DX)の必要性について理解しているが・・・・ 既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化
・ 経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている→この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)。
経済産業省 ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
しかし、経済産業省が作成したDX推進指標を利用して、「独立行政法人情報処理推進機構」が、2022年までのデータを分析した結果をまとめたところ、DXを推進できるレベルに達していない企業が、9割以上存在していたのです。
出典:情報処理推進機構「DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート2021年版
上記の表1-2では、レベル3以上を先行企業(一歩先を行く企業)とみなしています。それを基に、表3-4を見てみると、先行企業とみなされないレベルの1と2に当てはまる企業は3190件。これは、自己診断の回答があった企業3956件の80.7%です。
さらに経済産業省は、2022年7月に下記のような報告を出しました。
●DX推進に取り組むことの重要性は広がる一方で、デジタル投資の内訳はDXレポート発出後も変化がなく、既存ビジネスの維持・運営に約8割が占められている状況が継続。
出典:経済産業省 DXレポート2.2(概要)
●DX推進指標の自己診断結果を提出した企業の平均スコアは伸びてはいるものの、「企業のデジタル投資は、主に、既存ビジネスの効率化中心に振り向けられている」という状況に変わりはなく、DX推進に対して投入される経営資源が企業成長に反映されていないと考えられる。自己診断結果を提出していない企業が水面下に多数いることを考えると、この状況はさらに深刻な段階にある可能性。
企業のDXが進まない理由
なぜ、中小規模企業のDXに対する取り組みが進まないのでしょうか。
2023年に、独立行政法人 中小企業基盤整備機構が、全国の中小企業経営者1000社を対象にしたアンケート調査を行ったところ、70%を超える企業が「DXの必要性を感じている」と回答しました。
しかし、「既に取組んでいる」「取組みを検討している」と回答した企業はわずか30%
取り組みが遅れている一番の理由は、人材不足でした。
DXを進めるには、具体的に目標を設定したり、経営の戦略を練ったりする必要があります。
しかし、それと同時にITやDXにかかわる人材の育成も考えなければ、成功に導くことはできないのです。
DXは単なるIT化とは違う?生産性向上の要素が必要
DXは、単にIT化すればよいものではありません。
しかし、そもそもIT化とは?デジタル化をすればIT化なのでしょうか。
そして、IT化すれば、「DXを進めることができた」といえるのでしょうか。
デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いは?
tization(タイゼーション)は、「化」と訳されます。
Digitization(デジタイゼーション)は「デジ」「化」する。つまり、デジタル化という意味になります。
デジタイゼーションは、人の手で文字を書いたり計算をしたりしてきたことを、コンピューターなどを使ってデジタルに行うことです。
アナログ | デジタル |
手書きで文字を書く | パソコンで文字を打つ |
文字盤と針で表示された時計 | 液晶やLEDディスプレイに時間が数字で表される時計 |
紙に手で絵を書く | グラフィックソフトを使って絵を書く |
レコード | CD・DVD |
では、デジタライゼーションとは、どのような意味でしょうか。
talization(タライゼーション)は、「集計」と訳されます。
Digitalization(デジタライゼーション)は「デジ」を「集計」する。
ただ単にデジタル化するだけではなく、デジタルの機械や器具で人やモノをつないで、業務の効率化を図ること。つまり、IT化という意味になります。
デジタル | IT |
紙媒体でやり取りをしていたFAXや書類 | デジタルFAXやメール |
会社内の打ち合わせなどのために直接会う | チャットなど |
車を購入して所有する | 個人で所有せずに、カーシェアリング |
DXはITをプラスではなく活用してビジネスを進化させる必要がある
DXは、企業がデータやデジタル技術を活用して企業価値を高めたり、事業の収益を上げたりする方法を考え直し、競争するための優れた点を作り上げること。つまり、デジタル化やIT化は、DXを進めていくためのツール。ITを活用して、ビジネスを進化させるということです。
TI | デジタル機器を活用して人やモノをつなぎ、業務の効率化を図ること。 情報技術の総称。 |
DX | データやデジタル技術を活用して、企業価値を高めたり、事業の収益を上げる方法を考え直すこと。競争するための優れた点を作り上げること。 |
DX(デジタルトランスフォーメーション)化による未来はどうなる?
DXが進むと、企業の未来はどのように変化するのでしょうか。
- 今まで行ってきた事業の優位性が保たれなくなります。例えば、同じ業種に新しく参入してきた企業が、DXを進めて優位性を向上すれば、企業間の競争に負けてしまいます。
- 市場を破壊するほどの、デジタルテクノロジーで急成長する企業が進出した場合、既存の企業に大打撃をあたえます。
事実、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は、膨大なデータを集めて活用し、市場を支配している状態です。
つまり、早急にDXを取り入れて進めていかなければ、次第に同業種との格差が広がり、事業の拡大などが不可能になる。さらに、「2025年の崖」で示されていたように、膨大な損失が出ることでしょう。
では、私たち消費者の未来はどのように変化するのでしょうか。
- 医療に関する人手や設備が希薄な地域でも、オンライン診療やお薬の指導などができる体制が整えられる。
- 子どもたちのための医療や、母子の保険サービス等が、住んでいる場所にかかわらず受けられる。
- テレワークの導入により、地方から都市へ出ることがなく仕事ができる。
DXが進むと、私たちにとって、とても便利で過ごしやすい社会に変わっていきます。
しかし、企業の取り組みが遅れている理由は人材不足。DXを進めていくためには、企業が努力すると同時に、個人もリスキリングでITやDXを学び活用する必要があるのです。
世界と比較した日本のデジタル競争力
日本は世界と比べると、デジタルの競争力はどのようになっているのでしょうか。
30年以上、世界の競争力に関する情報を集めて研究をしている機関、IMD(国際経営開発研究所)のデータでは、世界から見て大きく遅れているようです。
世界デジタル競争力ランキング 日本の実績推移
世界デジタル競争力ランキング2022では、日本は63カ国中29位。
DXを推進するための予算の確保が難しい、人材育成が進まない、このことが世界の競争力ランキングにも如実に表れています。
DX人材(人財)はビジネスの生産性向上&IT導入のリスキリングが求められる
岸田文雄内閣総理大臣は、2023年8月の会見で、「わが国のデジタル化の遅れを痛感」と述べました。
日本のDXが進まない一番の理由は人材不足。そのため政府は、企業がIT導入のリスキリングで人材を育成し、ビジネスの生産性向上ができるように補助金や助成金を支援しています。
政府は5年で1兆円のDX人材育成投資!
2022年10月、衆院本会議で所信表明演説をした岸田総理は、個人のリスキリングの支援に、5年で1兆円を投じると表明。これは、継続的な成長のための投資ということのようです。
さらに、勤続年数や年齢を重視していた従来の給与体系を、高い能力や実績によって決められる仕組みに、社会全体を変えていく。そのためのリスキリング支援なのです。
DXに関連する補助金・助成金
中小企業のDXが進まない最大の理由は人材不足でした。そして、予算を確保できないため、ITの導入や人材育成が難しいことも理由の1つです。そのため、政府はさまざまな補助金や助成金で支援しています。
IT導入補助金
生産性を高めるために、ITを導入する費用を支援する制度。
ITに関係するさまざまなソフトやハードウェア、セキュリティを強化するための費用や、インボイス制度に対応するツールの導入も支援しています。
ものづくり補助金(デジタル枠)
中小企業や小規模事業者などが、今から先に変更される制度(インボイス導入や、働き方改革など)に対応できるため、組織を新しくしたりサービスや試作品を開発したりするなど、生産方法の改善や向上を目的とするための、設備投資等を支援する補助金です。
応募のときに、事業計画書を提出する必要があります。それを、外部の有識者からなる審査委員会が評価して、秀でた事業計画書を提出した者が補助金交付候補者となるのです。
1年を通じて、応募ができるタイミングが何度もあり、以前の締切り回で不採択となった場合でも、再度申請することが可能です。
事業再構築補助金
コロナの影響を受けた2020年から、環境の変化についていけなかった中小企業や個人事業主等の中には、売上げが大幅に減少し、深刻な被害を受けたところもあるようです。
そのような中小企業が、思い切った再構築をするために支援する制度。
例えば、新しい分野を展開して、新商品やサービスを提供。他には、主軸にしていた事業の業種を変えるなど。
補助金は7つの枠があり、全部の申請枠に共通した、必ず満たさなければいけない条件も提示されています。
キャリアアップ助成金
非正規雇用で働いている社員を、正規に雇い入れた場合。また、賃金を規定以上増額した場合など、働く環境を改善した雇用者に支払われる助成金です。
- 正社員コース
非正規雇用労働者を正社員として雇用した場合に助成します。
- 障害者正社員コース(公用文表記のため「害」を使用)
障害者の雇用を促進するとともに、職場定着を図るため、
・有期雇用労働者を正規雇用労働者(多様な正社員を含む)または無期雇用労働者に転換する措置
・無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する措置
のいずれかを継続的に講じた場合、助成金を受けることができます。
- 賃金規定等改定コース
基本給の賃金規定を3%以上増額改定して、その規定を適用させた場合に助成。
- 賃金規定等共通化コース
正社員と同じ仕事などに応じた賃金規定等を新しく作り、適用した場合に適用。
- 賞与・退職金制度導入コース
賞与・退職金制度を新たに設けて、支給または積立てを実施した場合に助成。
- 短時間労働者時間延長コース
働く時間を延長することで、非正規雇用者を新しく社会保険の被保険者とした場合に助成。
DXリスキリング助成金
中小企業が働いている人たちに対して、または個人事業主が、DXに関係する職業訓練を受ける一部費用が助成。
- 都内に本社または事業所(支店・営業所等)の登記があること。
- 訓練に要する経費を従業員に負担させていないこと。
- 助成を受けようとする訓練について国または地方公共団体から助成を受けていないこと。
などの申請要件があります。
そして助成額は対象経費の3分の2。1社64万円が上限額となっています。
アナログからデジタル、そしてAIの時代へ
アナログからデジタルへ日々進化する現代社会。
生活を豊かにするためや、世界の企業と戦うために、日本はIT化やDXを推し進めています。
そして、デジタル化やDXにAIを活用することで、さまざまな効果が得られています。
例えば、画像認識や音声認識なども、AIを活用した技術。
AIが企業で活用されると、他にどのような効果があるのでしょうか。
- 人手不足が解消する
- 生産性が向上する
- コストが削減される
- 人が起こすかもしれないミスを回避できる
- ビッグデータを活用できる
しかし、AIを使えばDXを推進できるということではありません。
AIはDXを進めるための手段のひとつ。そしてビジネスの現場でAIを活用する場合、次のような事柄が重要です。
- どのような供給源や技術が必要かを理解する
- それらを直接行う現場や担当者へ周知する
- AIを活用できる人材を育成する
ビジネス社会で生き残るためには、早い段階からAIを取り込み、環境の激しい変化に対応することが必要です。そのために、なくてはならないことが人材の育成。
つまり、DXのリスキリングを進めていくことが、重要となってくるのです。
DXのリスキリングが注目されつつも難易度が高い理由5選
DXの人材を育成するために、注目されているリスキリング。政府や企業も力を入れて推進していこうとしています。
スキルアップする必要があることは分かっていても、思うように進まない。なにか理由があるのでしょうか。
実は、リスキリングが簡単にいかない理由があったのです。
①アンラーニングが必要
アンラーニングとは、「今まで持っていた知識やスキルを、意識して捨てる。そして自分を見つめ直し、新しい学びをインプットする」ということです。
これは、今まで学んで実践してきた知識を、すべて捨てるというわけではありません。
- 必要がないものは捨てる
- 今後も使えそうなものは、磨きをかけてさらに使いやすくする
- 新しい知識とスキルを身につける
ということなのです。
リスキリングとアンラーニングは全く別物ですが、リスキリングをするために、今までの知識や経験が妨げになる場合、それはアンラーニングが必要ということになります。
しかし、今までの経験や成功体験を捨てるように言われると、アイデンティティーの一部を否定された気持ちがするため、進まないことが多いそうです。
このことが、リスキリングの難易度を上げている原因のひとつといわれています。
②AI活用に抵抗がある人が多い
総務省が2016年に「人工知能(AI)の進化が雇用等に与える影響」を調査しました。その結果によると、仕事のパートナーとしてAIが上司となった場合、抵抗感があるようです。
- 業務内容を細かく指摘される
- 厳しく査定をされる可能性がある
さらに、消費者庁が2020年に行った「第1回消費者意識調査」によると、アンケートに答えた1236名中、50%以上の人たちがAIに対して、「不安である」「何となくこわい」と感じていることが分かりました。
「親しみを持てない」「自身には関係がない」など、AIに対して負のイメージを持っている人も多いようです。
③新しい分野のため社内での教育が難しい
2018年にIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が行ったアンケート調査では、DXを担う人材の一例として、次の職種が書かれていました。
- プロデューサー
- ビジネスデザイナー
- アーキテクト
- データサイエンティスト/AIエンジニア
- UI/UXデザイナー
- エンジニア、プログラマー
参考:IPA独立行政法人情報処理推進機構 これからの人材のスキル変革を考える~DX時代を迎えて~
そして、DXに関係する専門的な人材がとても不足しているとのアンケート結果も。
つまり、企業に必要なデジタルビジネスプロジェクトを動かしていく、全ての人材を教育しないと、DXは進まないのです。
しかし、新しい分野のため、ノウハウを持っていない企業がほとんど。さらに、社内でデジタル技術を後継者に継承することも、一朝一夕には無理があります。
幅広いIT関係の人材育成教育が社内で難しい。
これも、リスキリングの難易度を上げている理由のひとつです。
④お金がかかる
DXをリスキリングするために、とても多くの費用がかかる場合があります。
一体どれくらいの費用がかかると思いますか。
全国の20代~30代の社会人360名に、インターネットで調査をした結果、個人がデジタル関連のリスキリングをするためにかけることができる費用は、全体の82%(273名)が「5万円未満」と回答。
さらに、デジタル関連のリスキリングを、「費用がかかるから」という理由で諦めた人は、なんと、全体で44%(146名)だったのです。
中小企業のDXが進まない理由のひとつは、「予算が確保できない」でした。それだけ、DXのリスキリングにはお金がかかるのです。
さらなる政府の補助金や助成金の周知が必要になるでしょう。
⑤そもそもDXとは?と理解している経営者が少ない
DXを進めていくために必要なことは人材の教育。しかし、現場が努力するだけでいいのでしょうか。
答えは「No」です。
では、何が必要なのか。
それは、上層部がDXの重要性を理解し、組織を率いていくこと。
- 「DXとは何か」を経営者がよく理解していない。
- 目標やビジョンが不明確なまま現場に丸投げ。
このようなことをすると、現場は混乱しDXの成功が遠のいてしまいます。
また、経営者が十分な知識を持っていないために、設備投資や新たなシステム更新など、現場との間にギャップが出てしまう点もあげられています。
DXを進めるためにはただ業務の効率化を指示するだけではいけません。経営者自身がこれまでの企業の業務や慣習に捉われず、変革を行う意思を社内に示す。
そして、現場から上がってきた提案等を検討し、改善することが重要なのです。
経済産業省は「マナビDX」を立ち上げて支援
難易度が高いDXのリスキリング。しかし世の中は急速にIT化やDXが進んでいます。
「リスキリングはどこですればいいのか」「デジタルスキルを学ぶ場を探すのが大変」このように悩む経営者も増えているのではないでしょうか。
そのため、経済産業省と、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、ポータルサイト「マナビDX」を開設。デジタルの人材育成を学ぶ場を探しやすくしました。
ポータルサイトでは、デジタルスキルを学ぶことができる学習コンテンツを紹介。
526件の講座(2023年10月時点)が登録されています。講座レベルや有料・無料など、細かい条件で受講したい講座が検索可能となっています。
AmazonはDXリスキリングに1人当たり75万円を投資
アメリカでは、2016年ごろから人材を「買う・交換する」という意識から、「作る・教育する」という方向に転換してきました。これが、リスキリングが広がっていった一番大きな背景のようです。
そして、リスキリングを先導する役割を持つ企業がAmazon。
従業員に対してのリスキリング事業としては、最大規模と言われています。
その内容は、従業員10万人のリスキリングに対して、2025年までに$700million(約750億円)投資すると、2019年7月に発表しました。この金額は、従業員1人あたり約7000$(2019年7月1日の為替レートで約75万円)。
後に$1.2billion(約1300億円)まで増やしましたが、それだけリスキリングに重要性を感じていたと思われます。
海外では非技術者を技術者へ移行させることも
Amazonが求めるものは、
- データマッピングスペシャリスト
- データサイエンティスト
- ビジネスアナリスト
などの、高度なスキルを持つ人材。
すべての従業員が、このようなスキルを持っているわけではありません。
そのため社内でリスキリングを行い、スキルアップを図ったのです。
具体的なプログラムは、技術を持っていない従業員をリスキリング。その後、技術職へ移行させる「Amazon Technical Academy」。
そして、テクノロジーやコーディングといったデジタルスキルを持つ従業員の、機械学習スキルの獲得を目指す「Machine Learning University」など。
このことから、Amazonはリスキリングで働いている従業員の、全体的なデジタルスキル向上を目指していることがわかります。
WalmartではVRを活用したリスキリング
アメリカでいち早くリスキリングに着手したのがWalmart。
2016年に行われたWEF(世界経済フォーラム)では、ロボットやAIなどが、労働市場に大きな影響及ぼし、世界15の国や地域で、今後5年の間に約510万人が職を失うと報告がありました。
この世界経済の課題とリンクしたため、リスキリングへ多額の投資を行ったようです。
しかし、Walmartには高校を卒業していない人も、従業員として多数在籍。そのため、通常の学びを嫌がるかもしれないと考え、カリキュラムを工夫しました。
例えば、
- 参考書だけではなく、対面での教育実施
- オンラインで行うウェビナー
- VR(Virtual Reality)を使った教育
- ハンズオン(体験学習)で学べる内容など
VRでは、最新技術で細かな手順や、一連の作業などをトレーニング。
- 顧客をサポートするカスタマーサービス
- 現場で直接お客様と関わるフロントライン
- 新しい技術で追加された商品管理
- 「ブラックフライデー」などレアイベントや災害対応など
ゲーム感覚で接客をバーチャル体験し、お客様のニーズを理解する。楽しく学ぶことで、勉強に苦手意識を持っている従業員であっても、取り組みやすかったのではないでしょうか。
DXのリスキリングを習得した人ができること
DXをリスキリングで習得できれば、競合する企業との競争に打ち勝つことができます。
それは、企業価値を高め、事業の収益を上げることになるでしょう。
また、自分自身の労働移動にも有益となります。
DX関係の仕事は専門性が高いものもあり、リスキリングで身につけたスキルをいかして、有利に転職を進めることも可能です。
DX検定の取得
この検定は、DXに関する用語をどれだけ理解しているかを確認できることが目的です。 受験すると、自分の理解度を確認でき、実戦でいかせます。さらに、認定制度があるため、名刺やプロフィールに記載できるメリットも。
受験資格 | なし |
試験概要 | 60分 120問の知識問題(多肢選択式) Web受検(自宅、会社のPCまたはタブレットでの受検が可能) |
レベル認定 | スコア800以上⇒「DXプロフェッショナル レベル」合格率3.1% スコア700以上⇒「DXエキスパート レベル」合格率9.0% スコア600以上⇒「DXスタンダード レベル」合格率18.3% (※レベル認定は2年間有効) |
開催日 | 年2回(1月と7月の指定日) |
受験料 | 6,600円(税込) |
申込先 | https://www.nextet.net/kentei/test/application.html |
受験内容は、「IT先端技術トレンド」と「ビジネストレンド」の知識が問われます。
合格率からみると、難易度の高い検定ですが、
- 協会推奨の書籍
- 協会推奨のDX Study eラーニング
などで勉強ができます。
特にDX Study eラーニングは、書籍をたくさん購入するよりもコストパフォーマンスがよく、多くの問題があるためテスト対策になるようです。
資格取得が一番わかりやすい
せっかくDXをリスキリングしても、証明できなければアピールしようがありません。アピールができなければ、昇給や転職に不利となります。
企業側も、専門知識を本当に理解しているか確認するものが必要でしょう。
理解していることを証明するには、資格を取得するのが一番です。
一例をあげると
- デジタルトランスフォーメーション検定
一般財団法人 全日本情報学習振興協会が認定する資格。
- +DX認定資格
IoT検定制度委員会が運営
出典:+DX認定資格
間違えてはいけないこと、それは、資格を取得することが目的ではないということです。
未来を見据え、どのように経験を積み重ね成長していきたいかを考えて、資格取得を目指すのが重要です。
製造業の生産性をアップ
製造業の現場でも、生産性の向上やコスト削減のために、ITの導入が進んでいます。
製造業のDXとは、
- ITやAIなどを駆使して業務効率化を図ること
- 製造した品物を利用する人の生活を、より良いものへと変革していくこと
製造業にIT技術を活用すると、製造工程を電子データで一元管理できます。
工程をデータ化して管理すると、これまでに培ったノウハウや、特定の人しか理解していない業務内容などを企業に蓄積できるように。
そうすることで、企業内のデータや情報のシェアが盛んに行われて、従業員全体で情報が共有しやすくなり、現場が効率化されるのです。
いまだにアナログ作業が多い製造業。その成長を助ける期待が予想されて、多くの企業が注目しています。
株式会社トプコンはDXグランプリに選出
トプコンのキャッチコピーは、「尖ったDXで、世界を丸く」
「医・食・住」に関する社会的課題をDXで解決。システムの構築や運営を通じて、顧客の問題の解決を図る企業です。
4年間、連続して「デジタルトランスフォーメーション銘柄」に選定されて、2023年5月に、「DXグランプリ2023」に選出されました。
- ヘルスケア分野では、かかりつけ医や眼鏡店、ドラッグストアなどで、眼の健康診断が行える眼健診(スクリーニング)の仕組みを創出
- 農業分野では、自動化が進む海外での現状も踏まえた「農業の工場化」を進めており、生産性の最大化に必要な自動化などの機能と、データを一元管理するサービスを、サブスクリプションモデルで提供
- 建設分野では、精密GNSS(人工衛星で自分の位置を調べることができる仕組み)を活用した、IT自動化施工による建機の自動化システムを完成させ、3次元計測技術やネットワーク技術と組み合わせながら、「建設工事の工場化」を実現
AIで作業を簡略化
AIを活用することで、作業スピードが効率化します。 特に単純な繰り返し作業や入力作業、データを分析する業務などに効果を発揮。
このことで、生産性の向上や人手不足の解消、さらに人件費を削減することができるのです。
サイバーエージェントは生成AI専門の「AIオペレーション室」を新設
メディア事業やインターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業を主とする、株式会社サイバーエージェント。
2026年までに、現在のオペレーション業務を6割削減。また、生成AI活用推進組織「AIオペレーション室」を、2023年10月に新設しました。
提供するサービスに生成AIを追加。商品やサービスを宣伝して集客する、業務の生産性を向上させるなど、研究開発をしています。
生成AI徹底活用コンテスト←賞金総額1000万円
株式会社サイバーエージェントが、生成AI活用のため、全従業員を対象に行った企画。
アイデアの内容は、業務の効率化やコストの削減、サービス改善や新規事業案などです。
集まったアイデアの数、なんと!約2200件!
その中からグランプリに選ばれたのは、
「AIを活用したスケジュール自動調整ツール」
強化学習を用いたスケジュール調整により、月間6万時間の時間削減を見込む。
そして準グランプリに選ばれたのは、
「顧客・ユーザーインタビューの価値・最大化を実現する、AIインタビューツール」
顧客やユーザーの発言を付け加え、人間のように深く調べたり考えたり共感ができる。
【まとめ】DX人材育成のためにリスキリングは世界各国で進行中!
2018年の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)から、3年連続で「リスキル革命」のセッションが行われました。
2020年には、「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」と宣言されたのです。
つまり、世界的にリスキリングが最重要課題になったということ。
日本は、世界の中でもデジタルランキング29位と、対応の遅れが見られました。
これは、経営者の理解不足や予算確保が難しいという理由で、DXリスキリングが遅れ、人材育成ができていないからです。
このことについては、政府も危機感を覚え、リスキリングの補助金や助成金に力を入れて支援しています。
これからは全ての人たちが、先積極的にリスキリングを行い、企業の発展や将来の労働移動に対応できる力をつけておく必要があるのかもしれません。
AI
コンピュータが膨大なデータを分析。それを基に、適切な回答を探して提示する。
生成AI
AI自身が自ら学習し続け、データやパターンを学習。新しいコンテンツを生み出し、新たなアウトプットを返す。