三井物産のDX人事育成は「やれたスイッチ」←全社員をリスキリング

グローバル企業として、世界中にビジネスの場を持つ三井物産。「人の三井」と評される同社は、DX人材の育成に早期から取り組んできました。本稿ではその人材戦略についてご紹介します。

三井物産のDX推進人事育成←やれたスイッチ

三井物産は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することで、ビジネスの効率化とイノベーションを図っています。この巨大な船を動かすためには、新しい風を受けて帆を広げるような、柔軟で創造的な人材が不可欠です。

三井物産の情報収集力←目利き

多様で優れた人材が多いとされる三井物産ですが、優秀な社員の勘と経験に頼って何とかなる時代ではありません。組織として、膨大な生きた情報を的確に収集・分析する能力は、今や必須のものとなっています。

そうでなければ、商機もリスクも見逃してしまいかねず、世界のライバルと伍して戦うことなどできないのです。

だからといって、DXの推進は単なるテクノロジーの導入を意味しません。DXをまともに機能させるには、最新の技術を「目利きする人材」、「使える人材」が必要です。さらに、それらの人材を「育てる人材」や将来を見据えたDX戦略が描ける人材がいなければ、DXという名を冠した一過性のイベントで終わってしまうでしょう。

そういえば、テクノロジーは、使う人によって発揮する能力が大きく変わりますね。例えば、ChatGPTを利用する方であれば、プロンプト(指示文)によって、出力の出来にかなりの差があることを経験されているのではないでしょうか。

人材育成の重要性

DX推進の中心となるのは、テクノロジーだけでなく、それを活用できる人材です。三井物産は、社内外の教育プログラムを通じて、デジタルスキルとイノベーションマインドを持った人材を育成しています。

教育プログラムのベースに位置付けられているのが、DX研修です。最も基礎的な講座(基礎Ⅰ)は自社制作ですが、それ以上(基礎Ⅱ、応用Ⅰ、応用Ⅱ)は、企業向けのeラーニングコースであるUdemy Businessが組み込まれています。

スキルとマインドは両輪のごとく、どちらが欠けてもイノベーションは起きません。一定のスキルが備わればマインドは高まり、マインドが高まればスキル習得の意欲も向上します。

三井物産では、モチベーションアップを図るため、DXによって成果があった例を積極的に提示・共有しています。「自分にもやれた!」という実感が、さらなる次のステップへとつながるからです。

やる気スイッチならぬ、”やれたスイッチ”が入るような支援をしているわけですね。

参考:全社員対象の「Mitsui DX Academy」で実現する“DX総合戦略”
参考:「やれたスイッチ」を入れる! 三井物産のDX人材育成法

新たな戦略の展開

従来のビジネスモデルを変革し、デジタル時代に適応するためには、絶えず学び、成長し続けることが求められます。三井物産は、この変化に対応するために、独自の戦略を展開しています。

独自の戦略って?

三井物産では、2017年に設置された役職CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を起源とし2019年に発足したデジタル総合戦略部が、DXの旗振り役を担っています。2020年に策定したDX総合戦略を基に、以下3つの戦略が進められています。

  • DX事業戦略:現場の設備・機器等の運用技術×デジタル技術で付加価値を生み出す。
  • DD経営戦略:社内データを徹底的に活用し、迅速かつ正確な意思決定を行う。
  • DX人材戦略:上記2つを支えDXを推進する人材を育成する。

DX人材戦略の具体的な施策には、すでにご紹介したDX研修、ブートキャンプ(プロジェクトの実践)、海外留学(最先端スキル・知見の習得)があります。

同社では、DX人材を、a:ビジネス人材、b:DXビジネス人材、c:DX技術人材の3グループに分けています。DX研修の履修状況やDX案件の実施回数等に応じて、それぞれの人材認定がなされる仕組みです。

人材育成に相当な予算をつぎ込んでおられますね。「人の三井」たる所以です。

参考:全社員対象の「Mitsui DX Academy」で実現する“DX総合戦略”
参考:三井物産のDX

三井物産のDX人材育成について←まとめ

DX推進は、単なるテクノロジーの導入ではなく、未来への投資と捉えることができます。三井物産は、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指し、人材育成に注力しています。

最新情報:三井物産の中期経営計画2026 人材の育成について

三井物産の中期経営計画2026において、人材育成に関する施策の中に、生産性を高めて仕事の付加価値を追求する、という項目があります。

目標達成のためには、社員個人のデジタルスキルはもちろんのこと、組織としてそのスキルを活用するための戦略や体制など、組織全体が持つべき能力の底上げが欠かせません。

組織力の向上とは、すなわち管理層のレベルUPです。何歳であっても学び続けるという企業文化を醸成するために、環境・仕組みの整備にさらに注力するというわけです。

参考:三井物産株式会社中期経営計画2026
参考:「未来をつくる」人をつくる 三井物産株式会社 人的資本レポート2023

同社が特に注力しているのは、DXビジネス人材を増やすことです。上記リンク先の記事(「未来をつくる」人をつくる~)によりますと、DXビジネス人材の認定者数は、2023年3月期時点で82名でした。2024年3月期の目標は100名です。きっと達成されるでしょう。

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