社会全体のDX化が進み、リスキリングの重要性が増す中、学習する内容として「データサイエンス」が注目されています。
一方、社会への浸透度はまだ低い状況なので、どのような取り組みなのか、イメージできない人も多いのではないでしょうか。
実は、「データサイエンティスト」は、経済産業省が定める「DX推進スキル標準」の人材類型にも定義されており、スキルを有する人材の需要は大幅に増すと考えられます。
データサイエンスとは?リスキリングできるのか?
「データサイエンス」は、専門的なスキルや深い知識が必要であるため、ごく一部のIT従事者でしかリスキリングが難しいと思われがちです。
とは言え、具体的にどのような仕事であり、企業がデータサイエンスで何を目指しているのかは、知らない人も多いのではないでしょうか。
- データサイエンスとは、そもそもどのような取り組みなのか?
- リスキリングで学習は可能なのか?
- 企業の事例は?
今回は、データサイエンスについて、この3点を調べてみました。
データサイエンスとは?
実際に「データサイエンス」とは、どのような研究・取り組みなのでしょうか。
データサイエンスとは?
▶ビッグデータから有用な結論や知見を導き出し、ビジネス上の意思決定をサポートする取り組み、また、そのための研究。
ビッグデータとは、日々生成される多種多様なデータ群のことです。
身近な例は、以下のようなデータです。
・Webで収集される行動履歴
・ネット通販の購買履歴
・SNSに書きまれるコメント
多くの企業や団体は、収集されたビッグデータから市場動向を知り、製品やサービスの販促・改良に活用したいと考えています。
将来的にはさらに高度な需要予測や、他にも、農業における収穫予測、医療の診断サポートなどへ活用が期待されています。
このようなニーズから、ビッグデータを分析するデータサイエンスは、専門的な職種として注目されており、職業として行う人を「データサイエンティスト」と呼びます。
データサイエンティストは、次のような知識やスキルを駆使して結果を導き出し、ビジネスに役立つ情報を企業へ提供しています。
- 数学・統計学・機械学習といった科学的な知識
- プログラミングなど、ITエンジニアリングのスキル
- 組織や業務に関するビジネスの知識
データサイエンス系資格はある←リスキリングできる
データサイエンスって、やっぱりかなり難しそう!
初心者のリスキリングはムリなんじゃ・・?
たしかに、データサイエンティストとしての知識やスキルは、短期間で習得できるものではありません。
ただし、データサイエンス系の資格は複数存在しますので、学習を通してリスキリングすることは誰にでも可能です。
資格の学習を通して知識を深め、データサイエンスとはどのようなものか、実際に学ぶことができます。
初めてデータサイエンスに関わろうとする人は、資格取得から挑戦するのも有効な手段です。
データサイエンティスト検定
「データサイエンティスト検定 リテラシーレベル(DS検定)」は、データサイエンティストとしての基礎的な知識と実務能力を証明する資格です。
必要なスキルを4段階に定義した「スキルチェックリスト」の、「アシスタント・データサイエンティスト(見習いレベル:★)」の範囲を中心に出題されます。
なお、問題は技術的な知識だけではなく、実際のビジネスシーンに沿った問題も出題されます。
そのため、学習することで、データをビジネスに活用する際に必要な知識など、実務に役立つスキルも習得できることがメリットです。
IT系の資格の中でも、キャリアアップや転職にも役立ちそうですね!
出題範囲は幅広く、計算を必要とする問題も多いため、初心者にはやや難易度が高そうですが、その分、多くの知識やスキルを習得できます。
OSS-DB技術者認定試験
「OSS-DB(オープンソースデータベース)技術者認定試験」は、「PostgreSQL」の基本的な知識やスキルが問われる試験で、合格するとOSS-DB技術者として認定されます。
「PostgreSQL」とは?
▶LPI-Japanが、2011年7月にリリースしたオープンソースデータベースソフトウェア。
試験は「Silver」と「Gold」に分かれており、「Gold」は、より高度な範囲が出題されます。
- Silver:比較的小規模のデータベース開発・運用管理など、基本的なデータベースの知識
- Gold:大規模データベースシステムの改善・運用管理・コンサルティングなど応用的な知識
最近は、多くの企業がビッグデータの処理を想定し、データベース開発・運用にOSS-DBの活用を検討しています。
そのため、資格を取得することで、IT技術におけるデータベース関連の知識が習得できるだけでなく、キャリアアップや転職で強いアピールができそうです。
データベーススペシャリスト試験
「データベーススペシャリスト試験」は、データベースの専門知識が問われる国家資格です。
この試験は、対象者を「データベースに関する専門知識を活用してシステムの企画・要件定義・開発・運用・保守に参画する技術者」としています。
試験内容では、データベースに関する高度かつ幅広い知識と、実務的なスキルに関する内容が問われるため、初心者にはかなり難易度が高い試験です。
知名度の高い国家資格であり、合格すれば、データサイエンティストに向けて前進できそうです。
また、データベース管理者やアプリケーション開発者としても、キャリアアップや転職に有利に働く資格です。
試験勉強をするだけでも、実務的なスキル、幅広い知識に触れられますよ!
データサイエンスをリスキリングして生産性を向上させた事例3選
ところで、リスキリングとしてデータサイエンスを学習した場合、どのように技術を実務に活かし、業務の生産性を上げることができるのでしょうか。
すでに、データサイエンスをリスキリングする人材育成講座から、企業の課題を解決したがあります!
愛知県松⼭市は、東京学芸⼤学の遠藤 太一郎准教授を講師に招き、「データサイエンティスト育成講座」を主催しています。
松山市の大学生と市内企業が参加し、データサイエンスの観点から、実際に企業が抱える課題の解決に取り組むことで、データサイエンティスト、及び企業内人材の育成等を目指すとしています。
ここからは、この講座で実際に行われた、企業のAI・データ活⽤推進とリスキリングの事例をご紹介します。
事例①「ひめぎんソフトのシフト作成の自動化」
愛媛県松山市のソフトウェア開発や販売を行う、株式会社ひめぎんソフトでは、幼稚園・保育園向けに支援システムを提供していました。
データサイエンティスト育成講座では、以下の課題に取り組みました。
【解決したい課題】:先⽣⽅のシフトをAIを使って短時間で作成したい。
1日かかっていた幼稚園の先生のシフト作成を30秒で
課題に対して、以下の結果が得られました。
【結果】:1⽇以上必要としていたシフトの作成を、30秒程度で作成できるようになった。
- 実施した取り組み:特定の園で1ヶ月分のシフトを⾃動作成した。
- 手法:Microsoft Excel のアドインプログラムであるソルバーを使い、数理最適化の問題を解いた。
この結果によって、実際の現場で⽣産性が向上し、働き⽅改善に貢献したとされています。
事例②「ダイキアクシスの不良品低減&コスト削減」
化槽等の各種排水処理装置の総合プラントメーカーである、株式会社ダイキアクシスは、事業の⼀つとして、浄化槽の製造販売をしていました。
データサイエンティスト育成講座では、以下の課題に取り組みました。
【解決したい課題】:不良率を低減し、コスト削減に繋げる
紙媒体⇒デジタルへのDX化による改善
課題に対して、以下の結果が得られました。
【結果】:不良発⽣の条件に関する⽰唆が得られ、事業戦略に活⽤できるようになった。
⾼精度な予測モデルは構築できなかったが、不良情報の分析結果を外注先へフィードバックできた。
- 実施した取り組み:紙媒体のデジタル化および、不良率の低減に向けた有効性の確認
- 手法:
- ビジネス理解=品質管理の統計的⼿法。(「QC七つ道具」と呼ばれる品質管理の手法。)
- データ理解=探索的データ解析(EDA)
- 不良予測モデルの構築=Pythonの機械学習ライブラリ「 PyCaret 」の利用。
紙媒体のデジタル化から取り組みを開始し、データ解析・AI化から、データに基づいて判断し、意思決定に繋げるDX化が実現したとされています。
事例③「EISによるTwitterマーケティング」
合同会社EISは、就職・転職情報の提供や、学生生活に関する支援情報を提供しています。
データサイエンティスト育成講座では、以下の課題に取り組みました。
【解決したい課題】:イベント企画などの活用のため、Twitterを⽤いて、⼤学⽣のトレンドとニーズを特定したい。
Twitter上の就活性の悩みを抽出
課題に対して、以下の結果が得られました。
【結果】:実用レベルの精度で、⾃動で1日に200件のTweetを抽出できるようになった。
(実施以前は⼿動で1⽇20件。)
- 実施した取り組み:就職活動に困っているTwitterアカウントの特定
- 手法:TwitterAPIを活⽤し、就活関連のツイートを取得。機械学習を活⽤して、その中から困っているツイートを分類した。
この取り組みの後、社内の業務フローが劇的に改善したそうです。
仕組が型化されているので、キーワードを変更して、探したいTweetのサンプルを集めるだけで、様々な分野に適⽤可能とされています。
データサイエンス分野のリスキリングは実務に直結しやすい
リスキリングでは、主導する企業・学習する個人の双方にとって、専門性があり、実務に生かせるスキルを学習します。
ただし、これまで関わっていない個人が、急にDXの業務でやスキルを習得したり、企業がDXの事業やサービスを作るのは非常に難しいため、リスキリングする分野の選択は重要です。
この点においてデータサイエンスは、始めやすく実務に直結しやすいDXの分野と言われています。
既に会社にあるデータを分析できる
データサイエンスのリスキリングが実務に直結しやすい理由は、すでに存在するデータを活用できることです。
たとえば、システムエンジニアリングやプログラミングを最初から学ぶことに比べ、データ分析は、普段Excelなどで使っているデータを活用して学習できます。
元々の業務と繋げてリスキリングできるため、学習する側はスムーズに理解を深めていけます。
実際に、すでに存在するデータを分析・活用することで業務改善に生かしたり、新しい施策を検討するところから、DXに着手する企業が多いそうだ。
【まとめ】データサイエンスをリスキリングで学ぼう
データサイエンスについて、資格取得を通したリスキリングや、実際に企業が生産性を向上させた事例をご紹介しました。
リスキリングで収入アップを目指すなら、社会にニーズがあるスキルを選ぶことも、大切なポイントです。
データサイエンスは、企業や各団体で幅広くスキルを生かせるうえ、新しい事業創出にも活用が期待される、これから学ぶ価値が高いジャンルです。
また、データサイエンスの知識やスキルは、他IT系の仕事にも生かるため、キャリアアップや転職で、選択できる進路が広がります。
ややハードルが高い学習ですが、大きな成果を狙えるジャンルです。
これからリスキリングする人は、ぜひデータサイエンスに挑戦してみましょう!
これからリスキリングしたい人は、知っておいて損はないジャンルです!