リスキングで新たなスキルや知識を獲得して転職を目指す場合、実は介護の分野はかなりオススメです。
それでは、リスキングで介護分野を選ぶメリットを7つ紹介しましょう。
リスキリングで介護分野を選ぶメリット7選
リスキングで介護職を選ぶメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
①国から補助金が貰える!
リスキングで介護分野を選ぶ場合、国から介護事業所に支払われる補助金によって、正社員など有利な立場での就職やキャリアアップが可能です。
我が国では少子高齢化が進んで、介護職の需要が高まっています。その一方で介護職に就こうとする人の数が圧倒的に足りていないのが現状。そこで国は事業者に補助金を出して介護職の処遇を改善することにより、介護職を目指す人を掘り起こしたり離職率を減らしたりしようとしているのです。
以前は仕事が大変な割に給料が安いと、敬遠されたり離職率が高かったりしがちだった介護職。しかし今では補助金のおかげで賃金がアップしたり、非正規雇用者に対する社会保険・賞与・退職金などの制度が整えられてきたりして、かなり働きやすくなっています。
介護業界に対しては、どんな補助金制度がありますか?
たとえば「キャリアアップ助成金」です。
介護はキャリアアップ助成金の対象
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、事業主が非正規雇用者の正社員化や処遇改善に取り組んだ場合に国が事業主に対して助成金を支払う制度です。介護事業所もこの制度の対象となっています。
キャリアアップ助成金には次のような種類があります。
正社員化コース | 非正規雇用者を正社員にした場合に支払われます。 |
障害者正社員化コース | 障がいのある非正規雇用者を正社員にした場合に支払われます。 |
賃金規定等改定コース | 賃金規定等を改定して、基本給を3%以上アップした場合に支払われます。 |
賃金規定等共通化コース | 正規雇用者と非正規雇用者の賃金規定等を共通にして、いわゆる同一労働同一賃金に取り組んだ場合に支払われます。 |
賞与・退職金制度導入コース | 非正規雇用者を対象とした賞与や退職金の制度を作り、積立や支給を行なった場合に支払われます。 |
短時間労働者労働時間延長コース | 非正規雇用者の週所定労働時間を延長可能にし、社会保険の被保険者とした場合に支払われます。 |
キャリアアップ助成金の詳細(要件や金額、手続き等)については、厚生労働省のサイトを参照してください。
②介護スキルはAIで代替不可能!
AI(人工知能)は、業務の効率化や生産性の向上に役立つとされ、今後様々な企業で導入が進んでいくものと考えられています。その一方で、AIに仕事を奪われて雇用が喪失するのではないかとの懸念もあります。
せっかく介護の仕事についても、将来AIに取って代わられて仕事を失ってしまうというリスクはないのですか?
大丈夫です。介護職は、AIでは代替え不可能と言われています。
福祉業界は人間の能力が必要不可欠!
総務省の「令和元年情報通信白書」によると、「認識・操作性」「創造的知性」「社会的知性」との関連が高い業種は、AIによる雇用への影響が少ないと分析されています。そしてそういった業種の1つが介護です。
介護など福祉の仕事においては、社会的知性、すなわち他者とのコミュニケーション能力、他者の気持ちを汲み取って共感する能力、他者との交流経験を積むことでスキルを伸ばしていく能力などが必要とされます。
つまり介護の仕事は、人間である介護者が実際に利用者さんと触れ合うことによって成立するということです。そこで、介護の仕事が将来AIに取って代わられることはないと考えられているのです。
食っていけるスキルが身に着けられる!
少子高齢化の傾向は、わが国では今後も加速していく見込みです。AIで代替えできない以上、介護職に就く人材はますます必要とされます。
リスキングによって介護スキルを身に着けることができれば、転職先も簡単に見つけることができますし、長期にわたって安定的に仕事を続けることができるでしょう。
③「ありがとう!」って言われる仕事!
かつて介護の仕事は3K(きつい、汚い、給料安い)と言われてきました。しかし、待遇改善が進んだことで、最近では「新3K」と呼ばれるようになってきています。
新3Kって何ですか?
介護職の新3Kとは「感謝を分かち合える」「心がつながる」「感動できる」のことです。
特に人から感謝される経験は、介護の仕事をする人にやりがいを与えています。
介護のスキルはダイレクトに感謝されるやりがいがある!
介護は責任が重く、大変なことも多い仕事。それでもこの仕事を選ぶ人がいるのは、介護を通してやりがいが得られるからです。
介護職は、利用者さんやその家族から感謝されることの多い仕事です。
人は感謝されると「貢献感」を抱きます。これは「私は人のお役に立つことができている」という感覚です。そして、貢献感は「私は必要とされている」「私には存在価値がある」という強烈な自己肯定感を生み出します。それがやりがいとなるのです。
④パソコンが苦手でも大丈夫!
最近は、さまざまな業種でIT化が進んでいます。介護業界はどうでしょうか?
私は根っからのアナログ人間で、パソコンは苦手です。
こんな私でも介護の仕事に就くことはできるでしょうか?
介護の仕事の中心は人と人との触れ合いです。
ですから、パソコンが使えなくても特に問題ありません。
介護福祉士国家試験はITの科目はない!
介護の仕事に関する唯一の国家資格が「介護福祉士」です。介護福祉士になるには一定の受験資格を得た後、国家試験にパスする必要があります。
介護福祉士の国家試験では、介護の仕事に必要な知識について幅広く試されます。この介護福祉士国家試験の中に、パソコンやITに関する試験科目はありません。これは、介護の仕事においては、必ずしもパソコンやITのスキルは必須ではないと見なされている証拠です。
ですから、パソコンが苦手な人でも安心して介護の仕事にチャレンジしてください。
⑤ITが得意な介護人財は重宝されるかも!?
4つ目のメリットのところでは、「パソコンやITは介護の仕事をするのに必須のスキルではない」と申し上げました。すると、次のような疑問を持つ方もいらっしゃることでしょう。
私はIT業界に勤めていて、ITに関する知識やスキルはそれなりに持っていると自負しているのですが、それは介護の仕事では無用の長物なのですか?
無用の長物には決してなりません。
現にITスキルを持つ人材が介護業界で重宝がられていますし、今後ますます求められるようになります。
事務手続きのDX化は福祉業界の課題のひとつ!
利用者さんを直接介護したりその家族とやり取りしたりする業務には、必ずしもパソコンスキルは必要ありません。しかし他の業界同様、介護業界においても業務の効率化などの観点から事務手続きのDX化は避けて通れません。たとえば次のような変革です。
- 会計帳票や報告書等のペーパーレス化
- ソフトウェアによるシフト管理
- オンライン会議ソフトや動画を使った研修の効率化
- インカムやウェアラブルカメラなどを使った遠隔情報共有
- センサー等を使った一元的・自動的な見守り
さらに利用者さんが健常者と遜色なく行動できるようにする装具、介護者の作業を補助してくれるパワーアシスト器具や介護ロボットなど、デジタル技術を使った介護用機器が今後次々と開発されていくことでしょう。これらの操作指導や軽微なメンテナンスなどを行なう人材も必要とされるはずです。
ですから、ITの知識やスキルを持っている人も積極的に介護業界を目指してください。
⑥スキルを身に着けるための環境充実!
この記事では、リスキングで介護業界を目指すのがオススメだという話をさせていただいています。しかし、次のような悩みを抱えている方はいらっしゃらないでしょうか。
介護職に興味があり、リスキングによる転職を考えています。
でも、自分に合っている仕事なのかどうか確信が持てず、不安でなかなか一歩が踏み出せません。
国や地方自治体にとって、介護を担う人材の確保は喫緊の課題です。ですから、介護業界を目指す人を掘り起こしたり育成したりするための公的サポート体制がいろいろ整えられています。
その一例として、東京都が行なっている「かいチャレ」を紹介します。
「かいチャレ」←東京都が介護業界にチャレンジする人をサポート
「かいチャレ」は「TOKYOかいごチャレンジ インターンシップ」の略称です。このプログラムに参加する人は、都内の介護事業所において1~5日間のインターンシップ(職業体験)をおこないます。インターンシップの間は、1日あたり5,000円の給与が支払われます。
かいチャレは、介護の仕事の内容や職場環境を実際に体験すること、介護職に関する疑問や不安を解消すること、介護の仕事の魅力を知ってもらうことなどを通じて、介護に関わる人材を確保することを目的としています。
介護未経験でも手厚い教育体制
東京都の「かいチャレ」では、参加者の興味関心に応じて3つのプログラムを用意しています。
入門プログラム | 施設や事業所の業務を見学します。 |
コミュニケーションプログラム | 施設利用者と対話しながら、コミュニケーションの取り方を学びます。 |
体験プログラム | 実際に介護の業務を行ないます。 |
また専門のキャリアカウンセラーが参加者の不安や疑問に答えると共に、インターンが修了した後も介護の仕事への就労支援や定着支援を行なってくれます。
「かいチャレ」についてもっと詳しく知りたい方は、公式サイトをご覧ください。
「かいチャレ」以外にも、介護職を目指す人や介護施設に就職したばかりの人へのさまざまな教育・研修のプログラムが用意されています。たとえば厚生労働省の「ハロートレーニング」(離職者訓練・求職者支援訓練)や、都道府県や各地の社会福祉協議会が行なう福祉職初任者研修などです。また、各介護施設においてもていねいな初任者研修が行なわれています。
ですから、介護未経験であっても安心して介護職を目指すことができます。
⑦専門的な資格がとれる!←介護福祉士
介護の仕事に関する国家資格が「介護福祉士」です。
介護福祉士の資格がなくても介護の仕事をすることはできますが、利用者さんの体に直接触って行なう身体介護は、介護福祉士の資格がなければ行なうことができません。また有資格者になると、無資格者より基本給が高くなるのが一般的です。
ですから、介護の仕事に就く多くの人が介護福祉士の資格取得を目指します。
介護福祉士の資格を得るにはどうすればいいですか?
介護福祉士になるには、3つのルートがあります。
実務経験を3年詰むと国家資格「介護福祉士」になれる!
介護福祉士の資格を取得するには、国家試験を受けてパスしなければなりません。そして、この国家試験を受験するには、次の3つの要件のどれかを満たす必要があります。
- 養成施設ルート
介護福祉士の養成施設に指定された教育機関(大学・短大・専門学校など)の卒業。
福祉系大学、あるいは社会福祉士や保育士の養成施設を卒業した人は1年間以上、それ以外の学歴の人は2年間以上通います。 - 福祉系高校ルート
文部科学大臣・厚生労働大臣が指定する福祉系の高等学校または特例高等学校の卒業。
3年間の過程です。 - 実務経験ルート
介護の実務経験3年以上、および実務者研修480時間以上受講。
このうち福祉系高校ルートの場合、平成20年以前に入学した人は筆記試験以外に実技試験も受験する必要があります(それ以外の人は実技試験免除)。
リスキングで介護業界に転職しようとする人の中には、学校に通わずすぐに介護施設に就職する道を選択する人も多いことでしょう。この場合には、介護施設の実務経験を3年積み、480時間の実務者研修を受講することで介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができます。
安定の高難易度資格です
かつて介護福祉士は高難易度資格と言われていました。事実、第18回試験までは合格率50%を切っています。
しかし、近年は70%を超えるようになっています。2023年1月29日(筆記)と3月5日(実技)に行なわれた第35回介護福祉士国家試験は、合格率が84.3%と過去最高でした。
厚生労働省「介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移」PDF
これは最近の試験が簡単になったということではありません。国家試験受験資格に関する制度が整えられて、しっかりと実務経験を積んだり研修を受けたりした上で国家試験を受験するようになったためと考えられます。
【まとめ】リスキリングは介護分野も注目すべし!
AIを始めとする技術革新やビジネスモデルの変化などで、新たなスキルや知識を身につけて今の仕事や新しい仕事に備えるリスキングが注目されています。この記事では、転職先として介護業界がオススメだということをお伝えしました。
そして介護業界を選ぶメリットを7つ紹介しました。
- 国からの補助金により、労働環境が整えられている
- AIによって雇用を失う心配がない
- 感謝されることでやりがいを持てる
- パソコンが苦手でも大丈夫
- ITが得意なら重宝される
- スキルを身につけるための環境が充実している
- 介護福祉士という国家資格が取れる
もしリスキングをお考えなら、ぜひ介護業界への転職も選択肢に入れて検討してみてください。
どうしてリスキングでの転職で介護職がオススメなんですか?
介護分野を選ぶと何かいいことがありますか?