日本で多くの企業や組織は、デジタル技術を活用し業務の効率化や業務刷新といった、デジタルトランスフォーメーション(DX)が急務となっています。
そのような状況の中、日本では「デジタル人材が不足」から、なかなかDX化が進まない企業が多いというのです。
リスキリングはこうした技術革新やビジネスモデルの変化に対応するべく、関連する新しい知識を学びスキルを身に付けることなのです。
今回は日本の「7つの課題」はリスキリングによって解決できるのか、そしてそこに潜む問題点は何か!?確認していきたいと思います。
リスキリングにおける日本の課題7選
DX化が進まない理由に挙げられている「デジタル人材」不足ですが、一向に進展が見られないのが現状です。
それは一体なぜなのでしょうか。
経済産業省では「2025年の壁」というDXに関するレポートを提出しています。
その中には企業の古くから伝わる伝統やレガシー(遺産)が最大で12兆円もの経済損失に繋がってしまうというものでした。
そのためDX化による、技術革新によって業務の効率化・省人化は急がれるのですが肝心の「リスキリング」による人材育成も二の足を踏んでいる状態だというのです。
①リスキリングに取り組んでいる会社は1割程度
この深刻な事態をしっかり捉えている企業は、まだまだほんの一部だと言います。
企業におけるリスキリング実態調査によると、リスキリングという言葉を認識している企業は約4割になり、半数にも届いていません。
さらにすでに取組んでいる企業になると、わずか1割という結果になっています。
そもそも何のためにリスキリングを始めるのか、どんなスキルを学べば良いのか分かっていない企業も多いようです。
②人材投資の消極性
日本の多くの企業は、人材への投資に対して積極的ではありません。
人的資源と人的資本という言葉があるのを皆さんはご存じでしょうか?
「人的資源」という言葉は、人を費用やコストとして見なす考え方になります。
一方で「人的資本」という言葉はその人の持つ能力やスキルを資本と考え、投資から将来的にリターンを得ようという考え方です。
今の日本を見渡してみると、日本企業は「人的資源」として人材を考えている企業ばかりで、目先の利益ばかり追っているということが分かるのではないでしょうか。
中小企業の多くは、資金力が乏しく人材への投資が厳しい企業も多いようです。
教育費を「費用」と考える企業が大半
前述の通り、日本企業の多くは「人的資源」の考えが定着しているのが事実としてあります。
人材開発や能力開発にたいする人材への投資は、世界の先進国の中でも最低レベルになっているといいます。
その結果日本企業における人材競争力は、世界と比較しても最低水準となっているのです。
企業は目的に沿った人材投資を積極的に行い、競争力の水準を上げることが、今後重要となってくるでしょう。
③賃上げできるのか?
皆さんもご存じの通り、現状として平均賃金が伸びていない現状があります。
国際的に見ても日本が低水準を維持している状況ですが、他国は右肩上がりとなっており、賃金の差は開くばかりです。
そこでリスキリングのために企業は人的投資を推し進め、高いスキルを持った人材の充足が必要になってくるのです。
人的投資→スキルの高い人材の獲得→利益確保→賃上げ、という好循環させることが必要です。
その人材投資の結果として、企業は潤い賃金は上昇していき、低水準を脱することが出来るのではないでしょうか。
政府は労働移動を円滑に勧め賃上げを狙っている
日本政府はリスキリング支援として、5年間で1兆円の予算を投じることを表明しています。
この労働移動とは、現在働いている「既存分野」から「成長分野」への移動を意味しており、この移動する手段として「リスキリング」が必要になってくると見込んでいるのです。
政府はリスキリングによる円滑な労働移動により、賃上げを目指しているのです。
④DX人材の育成のコスト
それではDX人材を育成するためにかかる、コストの平均額を見ていきたいと思います。
まずはDXを推進していく人材に必要なスキルですが、以下のようなスキルが求められています。
<必要スキル>
・デジタル化の現状を把握と分析する力
・組織やプロジェクト管理能力
・IT活用するための知識とリテラシー
・システム開発やデザイン力
挙げると次々出てくるのですが、このような力を身に付けるためには一般的に「外部研修」が用いられます。
外部研修は1名1講座、40,000円前後が相場となっており、人数が多くなればそれだけコストは膨らんでいきます。
国の1兆円の投資だけで足りるのか?
政府は5年間で1兆円の予算を投じるとしており、年間にすると2000億円という計算になります。
この1兆円予算で賃上げを実現させるためには、リスキリングを行える環境を社会全体で作っていくことが重要です。
そして転職や副業といった「労働移動」は日本ではマイナスイメージを持たれています。
このマイナスイメージを払拭し、社会全体で労働移動をポジティブに捉え、好循環させることができれば、1兆円での賃上げは可能となってくるでしょう。
⑤個人が積極的にスキルを学ぶ姿勢を作れるのか?
人材投資を闇雲に行っても、求められるスキルを明確にしなければ、得られる成果は少ないと言えます。
何のために行うのか、しっかり示す必要があるのです。
今後事業をどのように展開していくのか、そのためにはどのようなスキルが必要なのか、明確にならなければ、従業員のモチベーションは上がらないでしょう。
さらには身に付けたスキルを活かせる部署に配置する事や、スキルに見合った報酬upを用意する等、従業員の目を引く事も重要と言って良いでしょう。
⑥生産性の低さを課題としている企業が少ない
日本の多くの企業の中には、残業を美徳化しており、早く帰る人は「悪」と見なされる企業も少なくありません。
時間をかける事はイコール生産性が低いということになり、どうすれば早く終わるのかという思考にならないのです。
そのような考え方を毛嫌いする従業員の多くは、給与体系が時間ベースになっており、会社にいた分の時間が給与として計算されるからなのです。
仕事はないものの、生活のために残業を「計画的」に行っている従業員も多いのが現状です。
さらに生産性の低下はデジタル化の遅れ(レガシーシステム)も大きく関わっており、早急に刷新しなければなりません。
DXに興味関心がない企業が多すぎる
技術革新による新たなステージを見越して、DXに力を入れている企業もあれば、逆に全く関心を持っていない企業もあります。
理由としてはさまざまあるのですが、主な理由はDXを単なるデジタル化の効率化ツールと捉えてしまっているからです。
業務をデジタル化した効果(コスト削減)を確認したがる経営層も多くいるのです。
DXとはビジネスモデルのトランスフォーメーションが真の目的のため、このような効果を期待している人にとっては、成果を感じづらく関心を持つことができないのかもしれません。
導入の効果が感じられず、DXへの興味が薄れていってしまうのでしょう。
⑦時間がかかる
リスキリングはビジネスの変革に対応するための「新たなスキル」を身に付けるという、点においては、中・長期スパンで人材開発が行われるパターンが多いようです。
時間が掛かるということは、その分費用も積み重なっていく事になり、企業自身の体力も必要なります。
さらには期間中の従業員のモチベーションを維持することも、重要になっていることから、企業を挙げたDXへの取組が必要不可欠となっているのです。
新しいスキルの習得には時間がかかる
新たにスキルを習得する事は、そう簡単なことではありません。
まったく経験したことのない分野であれば、さらにスキル習得は難しくなるでしょう。
そして実際にスキルの習得のために、業務の合間や退勤後といったプライベートの時間を費やさなければなりません。
このようにスキル習得のために取組むことは、並大抵のモチベーションでは持続できないでしょう。
前述しましたが企業を挙げてDXを推進し、スキル習得に向けた環境作りも大切なプロセスとなっているのです。
【まとめ】リスキリングを日本全体で勧めるには課題がある
日本でも大企業を中心に、従業員を対象としたリスキリングに取組む企業が増えてきています。
ですが日本全体で見ると、リスキリングに取組む企業はまだまだ少なく、国際的に見ても低水準という状態にあります。
従業員の保有するスキルの把握や、将来企業にとって必要なスキルは何なのか、明確になっていない企業もあり、なかなかDXの推進が思うようにいっていません。
さらに日本の就業者の約7割が勤める「中小企業」では、リスキリングの推進は鈍く、この中小企業へ推進を急がなければなりません。
DX化は中小企業こそ必要な現状がある中で、デジタル化でのコスト負担ができないことや、人材が出せないなど、この課題をクリアする新たな政策が必要になってきていると言えるのではないでしょうか。
1000名以上の大企業と、100名以下の中小企業とではリスキリングの取り組みに大きな差が開いています。