コーポレートトランスフォーメーション(Corporate Transformation)は、企業が直面する急速なビジネス環境の変化に対応し、持続可能な成長を目指すための根本的な変革プロセスです。この記事では、コーポレートトランスフォーメーションの意味、その必要性、そして実際の成功事例を通じて、企業がどのように変革を遂げるべきかを探求します。
コーポレートトランスフォーメーション(CX)とは?
CXは「コーポレートトランスフォーメーション」の略で、「企業の根幹からの変革」を意味します。これは、企業が持つ価値観や考え方を最適化し、組織戦略の改革を実行することを指します。現代のビジネス環境は急速に変化しており、企業は組織改革を通じてこれに対応し、生まれ変わる必要があります。
このCXという言葉は、冨山和彦氏によるベストセラー「コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える」で一躍有名になりましたね。
CXの必要性
CXはビジネス環境の変化に対応できるように、「変革を続ける力」を企業に身につけさせることを目的としています。コロナ禍や社会情勢の複雑化など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。これに対応するためには、企業の根幹となる考え方や価値観の変革が必要です。
観光業や飲食業は、コロナで需要が激減しました。ロシアのウクライナ侵攻によって食糧価格は高騰しました。何かをきっかけとして中国や韓国で反日の機運が高まり、日本製品の不買運動が起きることも珍しくありません。
何が起きても不思議ではない時代です。グローバル時社会では、遠く海外で発生した事故・紛争・感染症でも、日本に大きな影響を及ぼす可能性があります。
経営者たるもの、大事が起きた際に(あるいは起きることを予見して)すぐに対応できるような体質の会社に変えておかねばならない、ということでしょうか。
CXのメリット
CXに取り組むことで、企業は事業の生産性向上、優秀な人材の定着と育成、事業継続性の確保など、様々なメリットを享受することができます。これにより、企業は競争優位性を維持し、持続可能な成長を達成することが可能となります。
NECは「2025中期経営計画」達成に向け、CXを核に経営改革を進めています。制度、プロセス・組織、ITにデータを加えた「三位一体 Plus One」戦略で、約150件ある全社プロジェクトを推進するとのことです。
投資額は500億円超。Purpose(企業の存在意義)実現を果たし、「選ばれる会社」となるべく、インフラの再構築、経営基盤の強化、Smart Work(ICTを活用してもっと効率よく仕事ができるようにする取り組み)の進化等を進めるとしています。
なお、CXと似た用語にDX(デジタルトランスフォーメーション)がありますが、NECによる両者の捉え方は「DXはCXを実現するための手段」というものです。このあとお話ししますが、本稿での説明の仕方とは少し異なっています。
参考:NEC、コーポレート・トランスフォーメーションを加速する変革プロジェクトを開始
参考:NECが推進するコーポレート・トランスフォーメーション(CX)
そういえば、DXもよく聞くなあ。違いがよくわからないんだけど…
CXとDXの関係性
DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現のためにはCXが不可欠です。DXはデータとデジタル技術を活用してビジネスモデルや組織を変革することを指し、CXはその変革を支える企業の内部変革を意味します。両者は密接に関連しており、一方が欠けても成功することは難しいのです。
DXでいう変革とは多くの場合、(デジタル技術の活用による)意思決定のプロセス、ビジネスモデル、サービス形態の変更等の改革を意味します。
一方、CXは、急激な環境の変化に対応できるように、またはすぐに順応できるように、企業体質そのものを変えることを指します。具体的には、企業理念、企業文化、組織構造など、いわば「憲法」に相当する根っこの部分の改革が含まれます。
本稿では「両者は密接に関連しており」と書いたように、「DXとCXは互いに補完し合う関係」という捉え方をしていますが、先ほど紹介したNECのように「DXはCXを実現するための手段」と考えている企業もあります。
さらに、CXをDXの一部とする説明も存在します。上にあげたような企業の根幹部分の変革もDXのうち、とする視点です。この場合、DXはCXを包含する大きな枠組みとなります。
いろいろな考え方があって面白いですね。
参考:両利き経営を実現する コーポレート・ トランスフォーメーション
参考:NECが推進するコーポレート・トランスフォーメーション(CX)
コーポレートトランスフォーメーションの成功への道
CXを成功させるためには、CXの認識を明確化し、社内で共有することが重要です。また、CXと事業の関係を検討し、DXと連携して変革を進める必要があります。継続的な発信と現場の状況把握も欠かせません。
CXは企業が生き残るために欠かせない要素となっています。技術革新や社会情勢の変化に対応し、競争優位性を維持するためには、企業の考え方や価値観から変革を起こし、CXの推進を考えていく必要があるでしょう。
リンク先は、冨山和彦氏による講演動画です。変革には10年ほどの時間をかけるべきであり、結局は、経営者の器量・力量にかかっていると。変革は選択肢ではなく、「生き残りをかけた必然」ということが実感できます。
社内への情報共有や状況把握は重要ですが、決定プロセスに誰を加えるかは、難しい問題だと思います。
先ほどの紹介動画で冨山氏は、「皆で話し合って」「ボトムアップで」などの日本式やり方では「絶対に失敗する」と仰っています。絶対反対するからと。
確かに。そもそも今の「決められない仕組み」から、迅速に動ける新しい体質に変えようとしているわけです。それなのに、旧来通りの仕組みの中で決め切れるはずがないのです。
変革の核心は、やはり人でしょう。変化を受け入れ・推進してくれる人材を増やすことだと思います。
あなたの会社はどんな状況ですか?
うちの会社も変わらんといけんのですか?