2022年10月3日の所信表明演説で、岸田首相が今後5年間で1兆円を投じると表明したことで注目を集めている「リスキリング」。「ユーキャン新語・流行語大賞2022」にもノミネートされましたが、「リスキリング」とは何かご存じでしょうか。
リスキリング(Re-Skilling)とは?
リスキリングとは何かについて説明していきます。
リスキリングの意味は?
リスキリングとは「現在持っていない、新しいスキルや知識を習得すること」です。リスキリングにより得たスキルや知識を活かし、現在とは異なる新しい分野へチャレンジすることを目指します。
昨今のDX化の高まりによって、デジタル分野のスキルや知識を習得するという意味で「リスキリング」という言葉が使われることがありますが、「リスキリング」の対象はデジタル分野とは限りません。
リスキリングの語源
リスキリングの語源は「Re」+「skill」です。「Re」+「skill」から「Re-Skilling」となり、技術や知識を再習得するという意味で用いられます。
リカレントとの違い
リカレントは、自分の意思で、現在の会社を休職・退職し、大学などで自分が望む仕事やキャリアに関わるスキルの獲得を目指します。
一方、リスキリングは会社の指示によって、会社が必要としているスキルや知識を学習することが多いです。会社の指示によって学習するので、会社で勤務しながら学習することになります。
リカレントは「自分が望む」スキルの獲得を目指し、リスキリングは「会社が望む」スキルの獲得を目指します。
スキルアップとの違い
スキルアップは、現在の業務に関わる、よりレベルの高いスキルや知識を獲得することを目指します。スキルのレベルアップをすることで、より難易度の高い業務に対応できるようにします。
リスキリングはスキルアップとは真逆で、現在とは全く異なる業務を担当するために、新しい知識やスキルを身に付けます。企業目線で考えると、リスキリングにより新しい知識やスキルを身に付けさせたうえで、人材が豊富にいる部署から人材不足の部署や新設した部署に社員を異動させることも可能となります。
スキルアップは「現在の担当業務に関わるスキルや知識の深掘り」を目指し、リスキリングは「現在とは全く異なる業務を担当するためのスキルや知識の習得」を目指します。
経済産業省が補助金を発表
岸田首相が「今後5年で1兆円を投じる」と表明した通り、リスキリングに関わる補助金を経済産業省が発表しています。
キャリアアップ支援助成金
キャリアアップ支援助成金は、アルバイトやパート、契約社員などの非正規労働者を正社員にしたり、処遇改善をした事業主に対して支給される助成金です。事業規模などは関係なく、申請内容に問題がなければ、どの事業者でも助成を受けられる仕組みとなっています。
申請は各都道府県の労働局やハローワークで申請できます!
(個人向け)補助金制度
ここでは個人向けの補助金制度について紹介したいと思います。
補助金を受けるには「雇用保険の期間が3年以上ある方」や、「厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了する」などの一定の条件があります。
一般教育訓練給付金
英検や中国語検定といった語学や、簿記検定や建設業経理検定といった事務関係などの講座もあり、講座を受講した際の費用の20%・年間上限10万円までを給付金として受け取ることができます。
特定一般教育訓練給付金
大型自動車第一種・第二種免許や社会保険労務士などの専門性の高い免許に関わる講座が多く、受講費用の40%・年間上限20万円までを給付金として受け取ることができます。
専門実践教育訓練給付金
対象講座は2820講座(令和5年4月1日時点)と非常に多く、看護師や理学療法士などの医療系から調理師やキャリアコンサルタントなど多岐にわたって指定されています。給付金も受講費用の50%・年間上限40万円まで受け取ることができます。さらに、資格取得等をし、訓練終了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%を追加で受け取ることができます。この場合の支給額合計は、最大で教育訓練経費の70%・年間上限56万円となります。
リスキリングに取り組む前に、取得したいスキルや学びたい講座があるか、先に確認してみてください!
ハローワークでも就職支援で活用
ハローワークでは求職者向けに職業訓練受講給付金を支給しています。職業訓練給付金の支給額は、月額10万円です。そのほか、訓練実施機関までの交通費が「通所手当」として支払われます。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業は中小企業の人材育成を後押しする
リスキリングなどを通じて社員教育を実施するにあたり、最初に課題となるのが教育コストです。補助金は、その課題解決の手助けとなります。コスト面での課題が解決されれば、従業員の意欲次第でリスキリングに取り組めるので、キャリアアップ支援事業は中小企業の人材育成の後押しになるでしょう。
リスキリングは何を学ぶ?←簿記とIT分野がおススメ
リスキリングでは様々な分野について学ぶことができます。
リスキリングで注目されている講座分野7選
ここからはリスキリングで注目されている分野をおススメの講座とともに紹介していきます。
リスキリングで新しいスキルや知識を習得する際の参考にしてください!
①英語
- 【IT×英語】仕事をスムーズに進めるための英語力を伸ばす講座
IT系で勤務経験がある講師がその時の経験を活かしながらリアルな英語を指導してくれるので、IT系の仕事に直結する英語を学習することができます。
参考:https://www.street-academy.com/myclass/160040?trigger=search_result
②簿記・財務
- ジョブスキル 経理部門(基礎コース)
簿記や財務会計の基礎、経理パーソンの心得、実務で即使えるExcelなどを中心に学習できます。経理業務に役立つスキルをさらに高めることができます。
参考:https://ejinzai.jp/reskillingbiz/detail/12
③動画編集
- 動画クリエイター講座
動画制作のスキルはもちろん、企画の立て方や、「いかにターゲットに届けるか」というマーケティング視点までを網羅的に学べる講座です。
参考:https://online.dhw.co.jp/course/netmovie/
④Webマーケティング・経営学
- 【現役Web担当が講師】課題解決型のWebマーケティング個別講座
オーダーメイド講座は、現役のWeb担当が、Webマーケティング、ディレクション(必要であれば制作)を個別に最適なカリキュラムで指導してくれます。
参考:https://www.street-academy.com/myclass/133235?trigger=search_result
⑤プログラミング
- Tech Academy Javaコース
システム開発やWeb開発に使われるJavaのスキルを身に付けることができます。受講者の現在の実力をもとに、もっとも効果的で無駄のないトレーニングメニューを設定してくれます。
参考:https://techacademy.jp/course/java
⑥データサイエンス
- insource リスキリングデータサイエンティストコース
AIの基礎知識や分析のための統計学や機械学習の基礎知識、PhyhonやSQLのプログラミングの学習を通して、データサイエンティストに必要なビジネス力・データエンジニアリング力・データサイエンス力の3つのスキルの基礎を総合的に体得することを目指します。
参考:https://www.insource.co.jp/bup/newcomer_it_general_reskilling.html
⑦医療・看護・介護
- ソラスト 医療事務講座 スタンダードコース
医療事務として働くうえで必要な、医療保険制度や仕組み、診療報酬算定の基本ルールを基礎からしっかり学べます。
参考:https://solasto-learning.com/courses/c_iryou/c_0117/
リスキリングをするメリット(個人の場合)
リスキリングで新しいスキルを習得できれば、会社内でキャリアアップできる可能性が高まります。また、自社だけでなく、他の企業でも通用するスキルを身に付けることができれば、転職時にも有利になります。
転職も考えている場合、DX化やグローバル化にも対応できるスキルを習得しておくと、転職時に有利になりやすいです。
リスキリングのデメリットは?
自分が興味のないスキルを会社の指示により習得しなければならなくなった場合、モチベーションが上がりません。また、新しいスキルや知識を習得したからといって、必ずしもそれを活かせる部署に異動できたり、キャリアアップできるとも限りません。
リスキリングの講座によっては受講期間が1年以上となるものもあります。会社からリスキリングを頼まれたとしても、よく検討してから取り組んでください。
リスキリングをするメリット(中小企業の場合)
人手不足への対応や、人員配置の見直しにも活用できます。例えば、全国的に不足しているIT人材をリスキリングにより自社から確保できれば大きな戦力アップとなります。今後、ますます発展するであろうDXに対応できる人材をリスキリングで確保できるだけでなく、DX化によって仕事を失った人材に新しい役割をリスキリングによって与えることも可能です。
IT人材は、今後10年以内に最大で79万人不足するといわれています。
リスキリングの制度を導入するデメリットは?
スキル習得までには時間がかかるため、長期的なプロジェクトとして取り組む必要があります。また、新たにスキルを習得できたとしても、確実に現場でそのスキルを活かせるとは限りません。習得したスキルが自社の経営や営業に活かせるかどうか考慮したうえで取り組む必要があります。
社員がリスキリングを遂げた後の体制を整えておくことも大切です。
リスキリングの問題点←予算と教育コスト
リスキリングを推進するうえで、解決すべき課題や問題点もあります。
リスキリング支援への批判
助成金だけではリスキリングに必要な費用の全額を対応することはできません。企業や個人にも一定の費用負担が発生し、その費用負担に必要な予算の確保や、教育コストの管理も必要になります。また、政府の実施するリスキリング支援は、助成金は給付するものの、新しく習得したスキルや知識を仕事に活かすための支援は充実していません。現状、習得したスキルや知識を活かせるかは企業にゆだねられています。
国策として1兆円予算で賃上げできるのか?
漠然とリスキリングを実施しているだけでは賃上げはできません。政府の目論見としては、リスキリングによって労働者を成長産業に異動させることにより、労働生産性を向上させ、継続した賃上げにつなげようとしています。そのためには、リスキリングに取り組みやすい環境、リスキリングによって習得した新しいスキルや知識を活かせる環境の整備が不可欠です。
賃上げを実現させるには、国だけ、企業だけ、個人だけといった、どこか1つだけが積極的に取り組むのではなく、社会全体として取り組む必要があります。
【事実】日本はリスキリングが遅れている・・・
リスキング先進国であるシンガポールやドイツといった国々と比較すると、日本のリスキリングは遅れています。リスキリング先進国では政府主導でリスキリングを推進しており、国民にもリスキリングの意識が浸透しています。日本はそういったリスキリング先進国の事例から学んでいく必要があるでしょう。
リスキリングで何を学ぶべきか迷ったら?【優先順位】
ここからはリスキリングで何を学んだらいいか、おススメ順に紹介していきます。
リスキリングで何を学ぶか迷った時の参考にしてください!
①プログラミング
リスキリングで最もおススメなのがプログラミングです。自社のシステム構築など、AIの活用だけに留まらず、新しい技術開発ができるぐらいまでのスキルを獲得できれば最高です。
②マーケティング
現代において、ブログやSNS、メルマガなどを活用したWebマーケティングはどの企業においても欠かせません。
③データ分析
データは収集するだけでなく、分析をする必要があります。DX化やマーケティングによって得たデータを分析できる人材が求められます。
④コミュニケーション
コミュニケーションスキルを磨くことで職場内の業務が円滑になり、職場環境の改善にもつながります。
⑤マネジメント
男性の育休取得や働き方改革など、管理職に求められるマネジメントスキルも変化しています。
⑥語学
DX化と同じく、グローバル化への対応も求められます。
【まとめ】リスキリングは大人のチャレンジ!
リスキリングによって新しいスキルや知識を身に付けられれば、今までとは違った人生が開けます。それは、現在勤務している会社でのキャリアアップかもしれませんし、転職によって得られるものかもしれません。年齢、性別、職業など関係なく、誰でもチャレンジすることができます。また、助成金などでチャレンジしやすい環境も整備されています。
リスキリングに興味を持たれた方は、この記事を参考にチャレンジしてみてください!
この記事では「リスキリング」とは何か。今、なぜ注目されているのかについて解説していきます!