DX・IT化・デジタル化の違い←AIでビジネス全体が変化するって本当?

デジタル化、IT化、DX、最近このような言葉を耳にする機会が増えました。

「うちの会社はIT化が遅れているから、業務の効率が悪い」
「職場がDXされると、テレワークが進むのに」

しかし、この3つの言葉の違いを、なんとなくわかっているつもりで使っていませんか。デジタル化、IT化、DXは、明確な違いがあります。では、何がどのように違うのでしょうか。

また、DXを推進するために、AIを活用する動きも活発になってきました。DXとAIの関係、そして、AIによって、ビジネス全体がどのように変化をするのかを、お伝えしていきます。

デジタル化・IT化・DXの違い

仕事中の会話の中で、ITやDXという言葉を頻繁に耳にしませんか。
事実、現代のビジネスにおいて、ITやDXは欠かせないものです。さらに、日常生活でもITやDXを活用しなければ、とても不便な生活へ戻ることになるのです。

しかし、この3つの言葉は何が違い、どのように使い分けるのか。

「ITとデジタルは何が違うんだろう?」
「DXとITの違いが分からない」

まず、デジタル化・IT化・DXの違いを簡単に、分かりやすくお伝えします。

デジタル化とは

デジタル化とはどのような意味でしょうか。

アナログからデジタル化

人の手によって行われてきたことを、コンピューターなどを使ってデジタルに行うこと。

アナログデジタル
手書きの文字パソコンで打った文字
文字盤と針で表示された時計液晶やLEDディスプレイに時間が数字で表される時計
紙に手で絵を書くグラフィックソフトを使って絵を書く
レコードCD・DVD 

IT(インフォメーションテクノロジー)化とは

ITとは、Information Technologyの略語。コンピュータやネットワークなどを活用した伝達技術の総称です。

情報の伝達技術を活用すると、人やモノがつながっていきます。
では、IT化とはどのようなことでしょうか。

デジタル化からIT化

デジタルの機械・器具を使って人やモノをつなぎ、業務の効率化を図ること。

  • 紙媒体でやり取りをしていたFAXや書類 ⇒ デジタルFAXやメール
  • 会社内の打ち合わせなどのために直接会う ⇒ チャットなど
  • 車を購入して所有する ⇒ カーシェアリング

ICTとは

ICTとは、Information and Communication Technologyの略語で、情報通信技術と訳されます。Communication(コミュニケーション)という言葉が入っていることで、通信技術が強調されています。

ITとICTは、ほとんど同じ意味ですが、国際的にはITではなく、ICTと使われているそうです。

ICTは企業が必要なだけで、私たちには関係ない?

ビジネス以外でも、さまざまなものにICTは使われています。
例えば、

  • 電子カルテ
    不測の事態などで、治療をする場所が変わっても、今までと同じように診察が受けられる、電子カルテの導入。
  • 教育現場
    1人1台のタブレットを使用して、デジタル教科書で授業を受ける。また、さまざまな事情で登校が難しい生徒も、リモートで授業を受けられる。
  • SNS
    遠くの友人とでも、すぐ近くで話をする感覚で、やり取りが可能。

毎日使用するLINEや、電車やバスに乗るためのICカードなども、ICT技術が使われています。
ICTの技術が使えなくなると、生活がとても不自由になるでしょう。

IOTとは

IOTは、Internet of Thingsの略語。モノのインターネットという意味。
総務省の「ICTスキル総合習得プログラム」では、IOTはICTの中の、ひとつの技術の要素と位置付けています。

【総務省ICTスキル総合習得プログラム(教材検証用)】eラーニング講座1-1「IoTとデータ利活用の全体像」

例えば、

  • 車の自動運転
    車内につけられたセンサーで情報を収集分析し、自動で運転する技術。
  • スマート家電
    ドアの施錠や解錠、別の部屋にいる乳幼児やお留守番をしているペットなどの安全を見守るカメラなど。さまざまな家電にIOTは搭載されはじめています。
  • 無人コンビニやスーパーのセルフレジ
    お店中にたくさんのカメラやセンサーがあり、スタッフを必要としないコンビニ。また、お客さんが支払いをするために、自ら商品のバーコードを読み取らせるレジなど。

つまり、まとめるとこのようになります。

IT 情報技術の総称
ICT 情報技術の使い方(国際的にはITと同じ意味だが、通信技術が強調されている)
IOT モノとつながり、ICTの技術で発展する

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略。

企業がデータやデジタル技術を活用して、企業価値を高めたり、事業の収益を上げたりする方法を考え直すこと。さらに、競争するための優れた点を作り上げることです。

各省庁の定義では

総務省によると

Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

引用元:総務省 デジタルトランスフォーメーションの定義

また、経済産業省では

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

引用元:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0

このように定義されています。

身近なDX

DXは、日常生活に関係ないのかな?

周りを見渡すと、いたるところでDXが活用されています。

  • フードデリバリーサービス
    昔から、電話で注文をして出前を取る、という行為が行われていました。大きな違いは、ネットを使って注文をすること。
    フードデリバリーサービスは、専用のアプリやブラウザから注文をします。そして、同時に手元で決済処理も完了できるので、現金を持っていなくても大丈夫です。
  • タクシーの配車サービス
    今までは、道に立って走っているタクシーを止めないといけませんでした。
    しかし、DXによって、お客さんは手元のアプリ操作でタクシーを呼ぶことができます。
    また、タクシー会社も、お客さんを探す手間が省け、コストダウン。
  • オンラインスクール
    通常、何かを習う場合、受講時間に受講場所へ生徒が出向く必要があります。
    しかし、オンラインスクールは、インターネットを通じて学習できるため、受講場所へ出向く必要がなく、自分の好きな時間に学習できます。

DXとIT化の違い

ITデジタル機器を活用して人やモノをつなぎ、業務の効率化を図ること。
情報技術の総称。
DXデータやデジタル技術を活用して、企業価値を高めたり、事業の収益を上げる方法を考え直すこと。競争するための優れた点を作り上げること。

デジタル化やIT化は、DXを進めていくためのツール。つまり、DXを進めていくためにITを活用するということです。

DXの説明

DXを進めるためには、ITをうまく使い成功させる目標等を立てる。さらに、それに対する課題を設定するなど。さまざまなアプローチをしながら進めていく必要があります。

2023年現在一番注目されているのはDX←AIビジネスの変革

DXを進めるためにAIを活用することで、さまざまな効果が得られます。そのため、活用を始める企業も少しずつ増えているようです。しかし、いまだにDXを推進するレベルに達していない企業が、多く存在することも事実です。

しかし、AIを使えばDXを推進できるということではありません。
なぜなら、AIもITと同じようにDXを進めるための、ひとつの手段に他ならないからです。ビジネスの現場でAIを活用する場合は、どのような供給源や技術が必要かを理解して、それらを直接行う現場や担当者へ周知されなければいけません。

AIによって単なるIT化では遅れてしまう。

AIは一般的に、人間の話す能力や覚える力、判断したり計算したりなどの認知機能を、コンピュータに行わせる技術です。
また、膨大な量のデータを学習し、画像や音声を認識する、自動で翻訳や運転を行うなど、私たちが生活するうえで、必要不可欠な存在となっています。

DXをより早く進めるために必要なのがAI。
なぜなら、ICTを活用できる人は、活用できない人より作業効率がよく、生産性が高いことと同じで、たくさんの情報を処理することができるAIを活用できる人は、ITのみを活用する人より、
競争上の優位性を確立することができるからです。

技術の進歩が速いAIを、早い段階から取り込まなければ、ビジネス環境の激しい変化に対応できなくなるでしょう。ICTのみでとどまっていたら、ビジネス社会で生き残ることができないかもしれません。

AIの活用効果

AIによって、業務の効率が良くなったり、生産が増加されたりすることは間違いないでしょう。
しかしそれと同時に、AIを活用できる人材や必要なデータの確保が必要になります。

  • 人手不足が解消する
    作業が自動化されるため、人の手で行っていた内容や時間が短縮。人手が足りない分野でも、業務の稼働に支障がなくなります。
  • 生産性が向上する
    業務のやりとりや流れが、AIを活用することで自動化。
    製品を作る手順や段階が簡素化され、さらに人員を減らすことができます。そのため、大きな成果を短時間で生み出すことができるのです。
  • 人が起こすかもしれないミスを回避できる
    日常業務や反復作業を行っていると、うっかり起こすかもしれないミス。現場で事故が起きると大変なことになってしまいます。
    AIでコントロールされたシステムがあれば、人的ミスを防げるのです。
  • ビッグデータを活用できる
    ビッグデータとは、日々生成されるいろいろなデータ群のこと。たくさんの企業が、ビジネスに生かすためビッグデータの解析を行っています。
    毎日、量産や更新され続けていくさまざまな種類のビッグデータを、収集・分析するために、AIが欠かせません。

IT化やDXができていない中小企業が多数

経済産業省が発表した内容では、DXで今までのシステムの問題を解決したり、業務の見直しができない場合、2025年以降に甚大な経済損失が生じるそうです。

2025年の崖

多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変するデジタル・トランスフォーメーション(=DX)の必要性について理解しているが・・・

・ 既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化

・ 経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている→ この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)

引用元:経済産業省 ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~

しかし、経済産業省が作成したDX推進指標を利用して、「独立行政法人情報処理推進機構」が2022年までのデータを分析した結果をまとめたところ、DXを推進できるレベルに達していない企業が、9割以上存在していることが分かったのです。

成熟度レベルの基本的な考え方
全指標における現在値の平均分布
引用元:IPA DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート(2022 年版)

この表では、レベル3以上を先行企業(一歩先を行く企業)とみなしています。ところが、先行企業とみなされないレベルの1と2に当てはまる企業は3190件。これは、自己診断の回答があった企業3956件の80.7%です。

この数字を見ると、まだ日本はDXが進んでいないことが分かります。

DX認定制度

経済産業省が、東京証券取引所と共同で選定し、認定してきた「攻めのIT経営銘柄」。
これは2015年から、ITを企業が積極的に取入れ、活用や促進してもらうために行ってきた活動です。

2020年からはデジタル技術を前提に、ビジネスモデルを根幹から変えて、新たな成長や競争力を強めるためにDXへ取り組んでいる企業を、「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」として、選定しています。

DX認定制度とは

国が情報処理法に基づいて、計画を立てたことを前提とし、すぐれた取組を行う事業者を、申請に基づき認定する制度。 そして認定の基準は、経済産業省令に定められており、これに適合しなければいけません。

DX認定基準
引用元:経済産業省 DX認定制度 申請要項

DX推進の成功事例

2023年度は、制度が始まったときから、飛び抜けた取り組みを続けている3社が、「DXプラチナ」。また、「DX銘柄」に選ばれなかった中から、19社に、「DX注目企業」。
そして、優れた実績の企業に贈られる「DX銘柄」に、グランプリを含む32社が選ばれました。

新しいサービスを提供 株式会社ブリジストン

株式会社ブリジストンは、国内の輸送業者用に、タイヤの空気圧や温度を遠隔でモニタリングできる技術の提供を開始。DXによって安全で快適、さらに環境にも優しいタイヤを提供することが可能になりました。

リアルタイムにモニタリングする利点

  • 日々のタイヤ点検の精度が向上。
  • タイヤ起因の運行トラブルを未然に防止。
  • 走行中にタイヤの空気圧や温度に異常が検知された場合は、車両管理者・運行管理者などにメールやデジタコの運行管理システムでアラート通知すると共に、デジタコからドライバーにも直接通知。
  • 日本全国に900以上の拠点を持つ、「ブリヂストンサービスネットワーク(BSN)」を活用した、迅速なメンテナンスサービスの提供が可能。
  • タイヤの空気圧を適正に管理することで、タイヤの空気圧不足による車両燃費の悪化を防止。
  • 車両走行中のCO2 排出量削減。

参考:デジタルトランスフォーメーション銘柄2023 株式会社ブリジストン

IOT時代に向けて、デジタルID認証事業を推進 凸版印刷株式会社

凸版印刷株式会社は、電源につながっていないモノの情報を、システム上で扱えるように取り組んでいます。DXにより、偽物か本物かを見分けるための技術を発展させ、中国高級酒や贈答用高級茶、また日本では、高級なキャラクターグッズを見分ける判定に採用され実績が拡大。

サービスの機能

  • モノに貼り付けるるRFID等のIDデバイス
  • 読み取りソリューション
  • IDを認証するクラウド基盤
  • ユニークID発行
  • 他システムとのAPI連携

参考:デジタルトランスフォーメーション銘柄2023 凸版印刷株式会社

新たな市場を創造するビジネスモデル アスクル株式会社

アスクル株式会社は、中小事業所向けECサイトと、中堅大企業向けECサイトを統合するプロジェクトを推進。双方の利便性が向上するだけではなく、BtoBのECサービスでは、他に類を見ない新しいビジネスモデルとなります。

DX推進による利点

  • 搬送ルートの自動生 成 を 行 うAGV(Automated GuidedVehicle)を採用。入荷作業を自動化させて人手作業を撲滅。
  • AMR(AutonomousMobile Robot:自律走行型協働搬送ロボット)を採用。人的負担を低減させて生産性向上に貢献。
  • 3 次元画像認識を行い、動作計画を自動生成するロボットアームを導入。2,000 種類の商品の把捉が可能。
  • アーム型のデパレタイズロボットを採用。ボトル飲料等の重量が張るケース梱包品出荷作業にかかる人的負担を軽減。

参考:デジタルトランスフォーメーション銘柄2023 アスクル株式会社

【まとめ】DXとIT化の違い

デジタル化、IT化、DXは、明確な違いがありました。

  • デジタル化とは
    人の手によって行われてきたことを、コンピューターなどを使ってデジタルに行うこと。
  • IT化とは
    デジタル機器を活用して人やモノをつなぎ、業務の効率化を図ること。情報技術の総称。
  • DXとは
    データやデジタル技術を活用して、企業価値を高めたり、事業の収益を上げたりする方法を考え直すこと。競争するための優れた点を作り上げること。

そして、DXを推進するうえで、いち早くAIを活用できれば、競争上の優位性を確立する可能性が高くなります。
しかし、IT化やDXを推進できていない中小企業が多数あり、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性も示されました。

今必要なのは、DXを進めていける人材の教育なのかもしれません。

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